鑑別鑑定書の見方 ~真珠科学研究所編~
真珠に鑑別鑑定書が付いて販売されることが最近、増えてきましたね。お客様にとって価格設定が妥当か分かりにくい懸念点を解消することに役立ってくれています。今回はその中の1つである真珠科学研究所の鑑別鑑定書の読み解き方を紹介します。どのような基準でグレード分けがされているか知ることで、理解を深めましょう!今回は少し発展内容になっていますが、一般の方も楽しめる内容となっているので最後まで読んでいただければと思います。
目次
1,そもそも鑑別鑑定書とは
2,鑑別鑑定書の注意点
3,グレーディングと鑑別鑑定書発行の全体像
4,より美しい真珠に付けられる4種のギャランティマーク
5,品質規格基準の基本的な考え方とパールマーク
6,唯一無二のオーロラ効果
7,まとめ
1,そもそも鑑別鑑定書とは
鑑別鑑定書は真珠の品質を一般の方にもわかりやすい形でまとめたものです。ダイヤモンドでいう鑑定書と似ていますが、鑑別鑑定書と鑑定書は全く別物です。鑑定書にはグラム数や石の削り方などが記載されており、鑑定書があれば複数のダイヤモンドの価値を比較できます。一方で、鑑別鑑定書は一定の基準を超えていることを証明するものであり、同じグレードにランク分けされても1点ずつ真珠の値段は異なり、完璧には優劣が付けられません。このような少し購入者にとって複雑な鑑別鑑定書をわざわざ用いている理由は、真珠の価値を決めるキズ、形、大きさ、テリ、色、連想等の要素は独立しておらず、互いに影響し合っているからです。5大要素についてはこちらの記事をご覧ください。
2,鑑別鑑定書の注意点
多くの企業が独自の鑑別鑑定書を発行しています。品質やグレードも鑑別機関によってバラバラなので注意が必要です。つまり、同じ花珠であっても、鑑別鑑定書の発行元によってグレードが異なることが往々にしてあります。統一化されていない理由は、美しさと値段の基準は、鑑別機関ごとに自由に設定できるからです。自分が持っている真珠に箔を付けるために、鑑別鑑定書を発行しようとされる方も注意が必要です。今回紹介している真珠科学研究所では、真珠販売店からのみ対応しており、個人相手にはサービスを行っていません。鑑別鑑定書が付いた真珠が良い場合は、購入時にすでに鑑別鑑定書付きのものを購入する必要があります。
3, グレーディングと鑑別鑑定書発行の全体像
鑑別鑑定書発行の全体像は次の4ステップです。※真珠科学研究所の場合
ステップ1 パールマーク検査
うす巻きや加工キズなどをチェックします。品質規格基準を設け、商品として十分に価値がある真珠であることを検査します。個々の段階で、偽物やあまりにうす巻きであるなど品質に問題があり、市場に出回らないものが排除されるイメージです。
ステップ2 グレーディング
品質は①テリ、②きず、③面、④かたち、⑤まきの要素を評価します。品質要素の構成比はテリが40%を占めています。また、グレーディングは母貝別に評価法を定めています。ここで、様々な機械を用いて一見違いが分かりにくい要素をそれぞれ測定します。
ステップ3 判定
グレーディングの後は、鑑別鑑定書発行機関基準によって「条件付合格」、「合格」、「基準外」のどれかの判定が下されます。条件付合格の場合は基準外の珠のみ印をつけ返却されます。そして、珠替えをして再審査し、基準を超えれば無事合格とみなされます。基準外の場合は残念ながら、鑑別鑑定書を発行することはできません。
ステップ4 鑑別鑑定書発行
合格した真珠には鑑別鑑定書が発行され、そこには4つのギャランティマークが添付されます。
4,より美しい真珠に付けられる4種のギャランティマーク
4種のギャランティマークについてそれぞれ意味を解説します。
・パールマーク
真珠科学研究所品質基準に検査合格の証として「パールマーク」が添付されます。ただ、半形真珠、コンクパール、アワビは対象外です。
・最高品質マーク
品質の構成要素5項目のすべてが、研究所規定の最高品質基準を満たした真珠に送られます。
・テリ最強マーク
研究所基準においてテリが「最強」の品質をみたすものに添付されます。
・光輝マーク
宝石としての輝きを持つ真珠に添付されます。
5,品質規格基準の基本的な考え方とパールマーク
2000年から導入されているパールマーク制度は「真珠科学研究所独自の品質基準を設定し、商品として十分価値を有する真珠であることを検査し立証する」ことを目的としています。この制度がPSLパール・グレーディングシステムの基礎とされています。
【品質規格基準の基本的考え方】
パールマークは、基本的考え方をa)真珠層の耐久性の維持b)真珠の定義からの逸脱防止とし、以下の基準を満たした真珠に与えられる証明です。
- 稜柱層や有機質層など、異質な層が露出していないこと
- 破損および層われがないこと、カットなどによる断面露出がないこと
- 真珠層が薄くないこと
- 内部の核が割れていないこと
- 加工きず(ひび、スポット等)
- 着色過度等により着用時に問題を起こす可能性がないこと
6,唯一無二のオーロラ効果
▲テリが強い真珠
▲テリが弱い真珠
オーロラ効果とは、真珠科学研究所創業者の小松博氏が2001年に発見した「真珠の下半球に光彩色が現れる」現象のことです。オーロラ効果を測定する理由は2つあります。1つ目は、テリの判断に利用するためです。真珠のテリは、長年真珠を見続けてきた熟練者により評価・選別が行われていて、一般の方には違いが分かりにくいものです。そこで、オーロラ効果の「テリが強い真珠ほど、光彩色が色鮮やかに出現する」特徴を利用し、誰が見てもテリの良しあしがハッキリ分かるよう工夫されています。写真のようにテリが良い真珠ほど、光彩色が鮮やかに出現します。2つ目は同一性の確認のためです。同じ大きさの真珠であれば、見た目はそっくりです。そのため、鑑別鑑定書で保障されている真珠が、実際のものと一致しているか疑問に感じる方もいるかと思います。オーロラ効果は人間でいう指紋のように、同じパターンは1つとしてないので、鑑別と真珠が一致していることを示す役割もあります。
7,まとめ
今回は真珠科学研究所を例に鑑別鑑定書の解説をしました。生き物から生まれる宝飾品だからこそ複雑で評価が難しい側面もあります。真珠科学研究所では、複数の基準による評価やオーロラ効果の測定などにより一般の方に理解し納得してもらう工夫がされていますね。次回はまた違った発行元の鑑別鑑定書をご紹介致します。お楽しみに!